研究成果 ライフサイエンス健康、医療、福祉 目標3.すべての人に健康と福祉を システムデザイン研究科
脳全体の循環場の表現を目指す!「ヒト脳循環デジタルツイン」の開発
掲載日:
バイオメカニクス、脳血流、脳脊髄液
どんなシーズなの?
デジタルツインとは、実空間で得られる情報を基にした「双子」を仮想空間上で再現すること。以前から画像ベース解析や個別化解析といわれるような、患者個々の再現データの構築は行われてきましたが、本研究では、複数の患者の再現データを仮想空間上で統合し、すべての人の脳循環を表現できるデジタルツインを構築することを目指して研究を進めています。
この統合的なデジタルツインの構築に必要なのは、個々の状態を再現するシミュレーションモデルと、複数の患者の臨床データ、そして膨大な臨床データを解析するための機械学習のモデルです。シミュレーションモデルは、CTやMRIで計測した実際の患者の臨床データから作り、これらのモデルを使って血管の太さや血流量などを変化させた「仮想的な臨床データ」を生み出し、機械学習の対象となるデータを増やすことで、より高い精度の予測評価の達成を目指します。これらの膨大なデータ処理には、スーパーコンピュータ「富岳」を活用していきます。
※本研究は令和5年度「スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム」の採択を受け、実施しています。
こんなことに使える!
「ヒト脳循環デジタルツイン」が実現すると、例えばある個人Aが病気になった際の脳循環情報を、ヒト脳循環デジタルツインを介して、別の個人Bの潜在的な病気移行予測に役立てることができます。また、シミュレーションモデルによる解析を通じて、従来は経験則に基づいて行われていた脳の血管をつなぐ手術を、定量的な指針の下で行えるようになるかもしれません。
本研究には多くの医師も参加しており、「臨床現場で本当に使えるのか」という観点も重視しながら、ヒト脳循環デジタルツインの開発に取り組んでいます。
こんな研究室です!
生体計算科学研究室では「生体現象を力学で捉え、数値モデルで科学し、工学により医療へ展開する」ことを目指して研究を行っています。
研究者
-
伊井 仁志 准教授
- システムデザイン研究科
関連文献
研究広報誌Miyacology15号のTMU Researchで、本研究を紹介しています。