Miyacology

「HiPIMS」を駆使した高度な成膜技術を探究

清水 徹英 准教授

Tetsuhide Shimizu
システムデザイン研究科 機械システム工学域

成膜プロセスの安定化と生体環境における溶解性の制御が課題

 私の専門分野は、表面改質技術によって高い機能を持つ表面を創り出すこと。その応用先の一つである医療デバイス開発では、生体インプラント材料をマグネシウムに代替させるための研究として、2018 年から地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターと共同研究を進め、生体内でのマグネシウムの溶解速度を制御するための酸化マグネシウム(MgO) 薄膜材料の開発に取り組んでいます。

 そのカギを握るのは、真空容器内での高密度なプラズマを用いて、薄膜材料を形成する「HiPIMS(High Power I mpulseMagnetron Sputtering)」という技術。アルゴンガスをイオンにして、マグネシウムの表面に叩きつけることで、マグネシウムの原子が弾き出され、さらに酸素を導入することで、基材の表面にMgO 薄膜が形成されます。HiPIMS 技術では、パルス電圧を用いて高密度のプラズマを形成するため、パルスの時間幅や周波数によって、柔軟なプロセス制御が実現されると共に、高密度プラズマにより多くの粒子がイオン化するため、電場や磁場を用いてそれらの粒子の流れやエネルギーを制御する事が可能となります。この特徴を活かす事で、MgO 薄膜の形成では、パルス電圧の周波数を自動で制御するプロセスを開発し、従来よりも高速かつ安定してMgO 薄膜を形成することを実現しました。これまでに本共同研究の枠組みの中で、疑似生体環境におけるMgO 薄膜の溶解特性に及ぼす材料因子が明らかになり、それらを活かした薄膜構造設計に取り組んでいます。

基礎研究に立脚した応用展開を目指して社会に貢献していきたい

 薄膜形成の「プロセス」について研究をする面白みは、それらがあらゆる産業技術へ応用展開ができることです。核となるプロセス技術は同じであっても、例えばチタン材料に酸素を導入することで酸化チタン薄膜が、窒素導入することで窒化チタン薄膜が形成されます。前者は光学薄膜としてガラス表面へのコーティング等に、後者は硬質薄膜として切削工具等に応用できます。一方で、これまで実現が難しかった材料の形成や、新規材料開発には、そのプロセスを熟知した上で、原子・分子レベルでの制御が求められてきます。これに対して、未解明な現象の多いHiPIMSプラズマの動的な特性を明らかにし、これに基づいた材料開発とその応用展開を目指して、日々研究に取り組んでいます。